2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けて、受動喫煙対策がますます注目されています。
厚生労働省では、成人喫煙率12%(平成34年度)の数値目標を設定して取り組みを進めています。
その一方、たばこ産業の「2018年全国たばこ喫煙者率調査」によると、成人男性の平均喫煙率は27.8%で、まだ成人男性の4人に1人は喫煙しているということですね。
そこで今回は、喫煙によるデメリットと禁煙する場合のメリットをあらためて考察してみます。
よい老後や定年後の生活を送るためにはもちろんですが、人生どのステージでもきちんと考えて欲しいテーマです。
さらに、非喫煙者のみなさん、「自分はたばこを吸わないから関係ないよ」と思わないでください。喫煙の特性を考えることで、他の生活習慣にも適用できる教訓についても挙げてみたいと思います。
まず結論:とにかくタバコはやめるべき! - よい老後を過ごしたいならなおさら
では、まず喫煙者に対してですが、これはもう「タバコはやめるべき」としか言いようがありません。
このサイトの趣旨でもある、よりよい老後を目指すのならなおさらです。
普通に考えて、有害物質を含んだ煙を直接吸い込んで、体の中に入れるのですから健康によい訳がありませんよね。
念のため、ここでタバコによる健康への影響を確認してみましょう。
喫煙による健康への悪影響をあらためて確認する
世界保健機関の報告によると、喫煙はがん、循環器疾患(脳卒中、心疾患等)、糖尿病、慢性呼吸器疾患(COPD 等)の4つの疾病のすべての危険因子であり、その関連が強いとされています。
また、2016年の厚生労働省の検討会報告書によると、喫煙との関連が「確実」と判定された病気として、がんでは肺がん、喉頭がん、食道がん、肝臓がん、胃 がん、すい臓がん、子宮頸がんなどが報告されています。
また、がん以外の病気としては、脳卒中、虚血性心疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、 2型糖尿病、歯周病などが挙げれらています。
重大な病名が並んでいますが、これだけではありません。
さらに、喫煙との関連が「可能性あり」と判定された病気としては、大腸がん、乳がん、認知症、気管支喘息、関節リウマチ、閉経後の骨密度低下、大腿骨近位部骨折、日常生活動作の低下、結核などがあるのです。
実は、まだまだ喫煙が健康に悪影響を与える例が多数挙げられているのですが… いったんこのくらいにしておきます。
とにかく、健康という人生で最も重要なものを損ないたくないなら、「禁煙するべし!」の一言です。
新型コロナ重症化リスクを高めるとの声明も…!
2020年4月27日の日経新聞では、WHOは同年3月20日に「新型コロナウイルスに感染した場合、喫煙は重症化リスクを高める」と注意喚起する声明を出したとの記事が掲載されていました。
また、東京医師会も重症化の予防策として禁煙を訴えているとも伝えています。
外出自粛に伴う在宅勤務が増えたことで、喫煙が普段より増える人もいるので、「これを機に禁煙し、リスクの低減を」と呼びかける専門家の声も紹介しています。
たばこはがんや脳卒中など様々な病気に関わり、煙に含まれる成分は免疫力を低下させるとともに、息切れや慢性閉塞性肺疾患(COPD)の主な原因にもなります。こうしたことから喫煙者は新型コロナによる肺炎が重症化しやすいというのです。
この点からも、健康への重大な影響はやはり見過ごせません。
病気だけでなく、生活習慣に関する気になる報告も
実は、喫煙者は上記に挙げたような病気にかかりやすいだけでなく、他の生活習慣でも問題が多いと報告されています。
喫煙者は、非喫煙者と比べて、食生活の偏り、身体活動量の不足といった生活習慣の乱れを併せ持っているとの報告があるのです。
具体的には、喫煙者は非喫煙者に比べて、朝食欠食が2.5倍、運動不足が1.3 倍、2合以上の飲酒が2.3倍、味付けが濃いことが2.2倍とそれぞれ多い状況であるとされています。
また、喫煙者は、非喫煙者に比べて、「野菜・海藻を毎日とらない」が1.4倍、「果物を毎日とらない」が2.3倍、「魚介類が少ない(週3日未満)」が1.4倍、「砂糖入り飲料を毎日とる」が2.0倍と、それぞれ多いことも報告されています。
もう、ネガティブなデータのオンパレードですね…。これらはどのようなことを意味しているのでしょうか。
喫煙が直接生活習慣の乱れに結びつくとは考えにくいので、喫煙者の特徴に関係がありそうです。さて、どんな特徴でしょうか…?
あくまでも個人的な見解と断っておきますが、「喫煙者は非喫煙者に比べて生活習慣の乱れが多い」という事実から
- 意識の面では「喫煙者は自分の健康への関心が低いことが多い」
- 環境の面では「喫煙者は生活習慣が乱れる環境に置かれていることが多い」
ということが言えるのではないかと思っています。
さらに思い切って言ってしまうと、「自分を律するのが苦手」という面があると言えるかもしれません。
なお、禁煙年数が長いほど、これらの生活習慣の乱れが少なくなることも報告されています。
喫煙で本当にもったいない5つのこと - 生活編
厚生労働省が平成30年5月に発表した禁煙支援マニュアル(第二版)増補改訂版では、「禁煙でもったいない5つのこと」として、生活編と仕事編に分けて具体例を挙げています。
まずは、生活面でとてももったいないとされていることをみていきたいと思います。
①時間を奪われる
1本の喫煙が5分間だとして、1日で12本吸うと1時間の時間が奪われることになります。
何かをしながら喫煙することもあるので、あくまでも単純な計算ですが、職場だと喫煙スペースに移動するなどの時間もあるでしょうから、喫煙に関してかなりの時間を費やしていると言えるでしょう。
逆に言うと、禁煙したらその分相当な時間が浮くということになります。
②老けてみえる
「老けてみえる」とは随分と主観的に聞こえるかもしれませんが、喫煙により皮膚が黒ずんだり、皮下のコラーゲンが壊れてしわが増えやすくなりますし、乾燥肌にもなりやすくなります。
年齢を重ねるにつれ、老け方の個人差は驚くほど大きくなるものですよね。あなたの周りでたばこを吸う人を何人か思い浮かべてみてください。年相応よりも老けてみえる人が多いのではないでしょうか。
あくまでも個人的な感想ですが、40代以上のたばこを吸う人にはどこか退廃的な印象があり、あまり若々しい人に会ったことがない気がします。
③たばこ代がかかる
一箱400~500円するのですから、喫煙しない身からすると一日にそれだけ使うのは大変もったいないなあと思ってしまいます。仮に一箱450円だとすると、一ヶ月で約13,500円、一年で約16万円もかかります。
一ヶ月に約13,500円というのはかなりの額ですね。それだけあれば、夫婦2人で毎月1回美味しい外食も楽しめそうです。
さて、「この金額を払い続けるのか…」とあらためて思った喫煙者もいるかもしれませんが、話はそれだけでは終わりません。
社会の風潮や国の財政状況を考えても、たばこの価格が今後下がる見込みは全くなく、一般の物価以上のペースで値上がりし続けることは間違いありません。現在よりも、さらにたばこにかかる支出は増えると考えてください。
④病気になって医療費がかかる
先に見た通り、「たばこは万病のもと」とも言え、メタボや糖尿病のもとにもなるとされています。また、免疫力の低下からインフルエンザにもかかりやすく、重症化しやすいともされています。
⑤家族も道連れにしてしまう
受動喫煙により、家族も病気になりやすくなってしまいます。換気扇の下など、家の中で吸う場所を配慮しても受動喫煙を完全には防ぐことができません。
なお、とても気になるデータとして、親が喫煙する子どもは親が喫煙しない子どもに比べて将来2~3倍喫煙しやすくなるとの調査結果があります。
喫煙だけに限りませんが、習慣については身近にいる人のマネをしてしまうことはどうしてもあるでしょう。家にたばこがあると、つい興味本位で子どもが手を伸ばしてしまう可能性も高くなります。
さらに言うと、先に述べた「自分を律するのが苦手」という面を子どもに見透かされて、「親だって喫煙をやめることができないのだから、自分だってやめなくていいだろう」と思われてしまうことがあるかもしれません。
喫煙で本当にもったいない5つのこと - 仕事編
次は、仕事面でもったいないとされていることをみていきます。これらも禁煙支援マニュアル(第二版)増補改訂版で挙げられていることです。
①知らないうちに客に嫌がられる
非喫煙者はたばこの匂いにとても敏感です。匂いを嫌う人も多いので、特に接客業などでは、たばこの匂いがせっかくの接客を台無しにしてしまうケースがあるかもしれません。
また、社内での同僚に対しても同様で、仕事振り以外で悪いイメージをもたれてしまうのではあれば非常にもったいないことです。
②仕事をさぼっているようにみられる
仮に、1日に1箱(20本)吸うとした場合、睡眠以外の時間帯で1時間に1本程度は吸う計算になります。業務時間の前後や昼休みに多めに吸ったりすることはあるかもしれませんが、1~2時間に1本程度吸うことになるかと思います。
喫煙スペースが業務のフロアから離れている場合は、エレベーターを使ったりと移動にも時間がかかりますので、一度喫煙に行くと10分以内に業務に戻るのは難しいのではないでしょうか。
喫煙のために、会議の開始に遅れたりすると印象も悪くなってしまいますね。遅れるつもりはなくても、会議開始が迫っているときに限って、エレベーターがなかなかこない…といったこともよく起きますし。
ある会社の社長がこんな話をしているのを聞いたことがあります。
「自分の会社では毎朝、業務開始時に短時間のミーティングを行っているが、その終了直後に数人の社員が連れだって喫煙室に行き、15分も戻ってこないことが常態化していた。非喫煙者である他社員から不満の声が出たこともあり、以降、社内で禁煙の支援をするとともに、喫煙者は採用しないことに決めた。」 |
採用の方針についての評価はさておき、不満を感じている非喫煙者の社員がいることを喫煙者はきちんと認識するべきでしょう。
個人的には、「そもそも業務時間が始まってすぐに、たばこ休憩に入ってどうするんだ…」とほとんど絶句する思いです。
「さあ、仕事を始めるか。まずはその前に一服」って…コントですか?
このような不満が社内のモチベーション低下にもつながるとしたら、経営者にとって当然見過ごせない事態です。
*定年延長や再雇用・再就職のためには心構えも重要。以下の記事もぜひ。
いわゆる「70歳定年法」が通常国会に提出される予定です。 「高年齢者雇用安定法」の改正案で、企業に70歳まで(努力目標)の就業機会確保へ努力義務を課すもので、再就職の実現、起業支援についても盛り込まれています。 こうした政府の後[…]
③病気で休みがちになる
「たばこを吸う人は吸わない人に比べて約2倍会社を休みやすい」とされています。喫煙が病気につながりやすいとされているのですから当然ですよね。
どのような理由であれ、急な欠勤は周囲に大きな迷惑をかけることになってしまいます。
自分の仕事が重要であり、顧客や同僚に迷惑をかけたくないという思いがるのあるのなら、急な欠勤は極力避けなければならないと考えるのは当然のことです。であれば、実際に避けるための具体的行動をとらなければなりません。
その具体的な行動の一つとして、喫煙者であれば禁煙という行動があると言えるでしょう。
個人的には、「咳が出る」「喉が痛い」と体調不良でしょっちゅう仕事を休み、「ご迷惑をかけて申し訳ありません」と周囲に言っている人が、顔色の悪いまま、業務の合間にいそいそと(?)たばこを吸いに行くのが理解できません。
煙を喉に通して、よくなるとでも思っているのでしょうか…
④ストレスがさらに増える
「たばこを吸うとストレスが解消になるようにみえるが実は勘違い」ということもはっきり述べられています。
ニコチンを補給して一時的にイライラを抑制しただけということです。
もともと喫煙習慣がなければ、そのイライラが発生すること自体ないのです。
「たばこを吸えば、気分がスッキリする」と効用を謳う人がいますが、完全に間違いです。本人も分かっているのだと思いますが、もともと喫煙習慣がなければ、そのスッキリがずっと続いていたはずなのです。
⑤火事の原因になる
これは仕事に関してだけの問題ではありませんが、実は、たばこは放火に次いで、火事の原因第2位となっています。
日常の生活の中に火の気がある訳ですから、当然火事につながる危険はあります。
火事にならないようにゴミの処理をしっかり行う必要があり、その手間もかかります。とりわけたばこを吸わない人にとって、吸い殻や灰といったゴミは大変嫌なものです。
私は新人時代、会社の会議後に毎回灰皿の後片付けをさせられていましたが、汚いし、臭いし、手間もかかるし、とても嫌でした。
*老後に火事で被災すると、生活再建が困難なものになりかねません。以下の記事もぜひ。
人生のリスクは色々ありますが、特に怖いと感じるのは、影響度の大きさに加えて、予測や回避が全くできないものに対してではないでしょうか。 その意味では、近年の地震や台風などの自然災害による被災の恐ろしさをあらためて感じた人も多いでしょう。[…]
非喫煙者の立場から考えること - 非喫煙者も注目すべき点とは?
正直に言います。私はとてもたばこが嫌いです。
今回の記事の執筆で、冷静にそのデメリットを振り返り、あらためてその思いを新たにしました。
最近はあまり見かけなく、以前多かった路上喫煙、道を歩きながら喫煙する人には、本当に腹立たしい思いをしていました。
狭い路上でこちらが後ろを歩いている場合は副流煙を避けようがなく、
「なんで、他人が出す毒煙を吸い込まなきゃならんのだ!」
と心の中で激しく毒づいていました。
ここで、非喫煙者の立場から考えていることを述べてみます。
禁煙を促すには啓蒙だけでは不十分
国や自治体が禁煙に向けて啓蒙することはもちろん大事なのですが、残念ながら、正論だけでは動かないのが人間の性(さが)というもの。
啓蒙で行動変容を期待できるのは、それなりに意識が高い人だけです。
人に行動を促すには立派な言説だけでは不十分で、アメ(インセンティブ)かムチ(痛み)も必要なのです。つまり、名と実があってこそ実効性が期待できます。
現実的に考えると、喫煙者を減らすにはたばこの値上げしかありません。
欧米ではたばこ一箱1,000円ほどすると聞きます。政府には、こういうところこそ先進諸国に学んでほしいと思います。
喫煙者が減ると税収が減る懸念あり?
なお、「喫煙者が減ると税収が減り、国の財政に悪い影響が出るのでは?」との思いを持つ人がいるかもしれませんが、私は気にする必要はないと考えています。
たばこ税の税収は国と地方を合わせて2兆円ほどです。
正確な計算はできませんが、値上げであれば喫煙者の減少割合ほどトータルの税収額は落ちません。つまり、仮に喫煙者が半分になったとしても、たばこ税収が半分になる訳ではないのです。
また、喫煙者が減ることで業務の生産性が向上すれば、法人税の税収増等につながることも期待できます。
さらに、喫煙者が減れば健康を損なう人も減り、医療費削減につながることも期待できます。(ただし、寿命が延びることで一生涯にかかる医療費は増える可能性はあると思います)
このように、トータルで考えると財政への影響はほぼないか、非常に限定的なものになるでしょう。
いずれにしても、たばこ税収を全て失ったとしても2兆円程度です。国民(4分の1以上いる喫煙者および受動喫煙者)の健康や生命に代えることはできないのではないでしょうか。
非喫煙者として得るべき教訓とは?
さて、喫煙に対して不満ばかりを言っていても仕方がありません。
誰にでも望ましくない生活習慣の1つ、2つはあるものですから、今まで述べたことをヒントに、非喫煙者も学ぶべき教訓を挙げてみようといます。
まずは意識が大事だということ
何か悪い生活習慣だったとしても、そもそも情報自体がなければ、意識する機会すら持てません。
また、入ってきた情報を自分なりに咀嚼して理解することも必要です。
ついては、以下のステップが望ましいと考えます。
情報へのアンテナを張る → 正しい情報なのかどうか見きわめる(裏をとる)→自分なりに意味を理解する → 評価する →行動へ反映する
「ボーっと生きててはダメ!」ということですね。
行動変容をは起こすのはそもそも難しい ー 他人だとなおさら
自分の行動はもちろんですが、他の人に行動(の変化)を促すことは輪をかけて難しいものです。
実効性を上げるには、大義名分(行動しなければならない理由)とやらざるを得ない仕掛け(アメとムチ)の両方を準備するのがよいでしょう。
つまり、理論と強制力の両方から「やらなければいけないか…」と思わせるようにするわけです。
これでも100%成功する訳ではありませんが、効果を上げるためのコツといえると思います。
中毒性があるものには、最初から近づかない
大学入学直後、私の周りの友人が次々にたばこを吸い始めたのを覚えています。
彼らの中で、おそらく初めてたばこを吸った時に「うまい!」と感動した人はいなかったでしょう。それなのに、吸い続けるうちにやめることのできない習慣として確立されてしまったのです。
ここから得られる教訓として、望ましくない習慣は「ハマる前にやめる」、さらに言えば「そもそも最初から近づかない」というのが正解でしょう。
薬物は論外ですが、パチンコ等のギャンブルでも同じことが言えます。オンラインゲーム等でも、自分は何かにハマり過ぎてしまう性質があると自覚している人は始めからやらないのが得策です。
視界に入らないようにする、物理的に近づかないようにするといった対策をとりましょう。
まとめ - 喫煙は一刻も早くやめるべし! 考えを行動に移すかは結局本人次第
非喫煙者としての気持ちも知ってもらうことが大切と考え、今回はあえて反発を呼びそうなことも思い切って書きました。
散々述べてきたように、喫煙習慣は何もよいことがなく、「もはや一刻も早く禁煙するべし!」としか言いようがありません。
正直なところ、今まで述べたことを知っても、「タバコやめようかな…」との気持ちがわずかでも湧いてこない人のことを、私は理解することができません…。
喫煙をやめることで、周りにいる人のことをより幸せにすることができますし、浮いた時間やお金を、自分の人生を豊かにするために使うこともできます。
人からどのように言われようと、実行に移すかどうか最後は本人次第。もしあなたが喫煙者で、よりよい老後に向けて準備をしたいと考えているなら、この記事がよいきっかけになることを願っています。
みなさんは、ファイナンシャルアカデミー「お金の教養講座」について聞いたことがあるでしょうか。 資産運用に関心の高いひとであれば、何度かその会社名や講座のことを耳にしたことがあるかもしれません。 同社の講座は新聞や雑誌でも取り上げ[…]