「人生つらいことばかり…何で自分ばかりこんな目に…」
「これからの人生、何を心の支えにして生きればよいのか…」
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老若男女問わずどんな人も、生きている限り悩みは尽きないもの。
そんな中、心のよりどころとなったり、生きる勇気を与えてくれる本があれば、これからの人生を歩む支えになってくれるかもしれません。
そこで今回、私が今まで50年の人生で読んだ中から、人生の困難に立ち向かう勇気を与えてくれる、絶対おすすめの本を紹介します。
どれも生死ギリギリの局面に置かれながらも、不屈の精神で苛酷な運命に立ち向かった人々の物語です。
①たった一人の生還【漂流中に仲間を失う過酷な運命】
1991年、ヨットレース参加中に、小笠原諸島沖で暴風雨に襲われ転覆してしまったヨット。
救命ボートに乗り移ってからの漂流で、仲間5人が次々に命を落とす中、たった一人生還した著者による記録です。
漂流直後、1日の食料は6人でわずかビスケット1枚。そして、何より水がない!1日わずか20㏄の水を3人で回し飲みする窮状。
漂流で10日ほど経った時、上空に自衛隊機をみつけ、「ようやく助かる!」と希望をもったにもかかわらず、その後何時間経っても救助がこない…。この時の絶望感たるや、想像を絶します。
その絶望のためか、仲間は次々に亡くなっていき…
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特に胸に迫るのは、漂流中に亡くなった仲間を水葬しなければならないシーン。
救助の後日譚も丁寧に描かれており、一人として夢をあきらめず、ヨットマンとして誇りを持ち続けた仲間への想いにも胸を打たれます。
夢半ばにした大切な仲間と道は分かれてしまいましたが、著者はその後もヨットを続けておられるそうです。
②エンデュアランス号漂流記【不屈のリーダーシップを学べる】
1914年、初の南極大陸横断を企図しながらも、途中で氷に船を砕かれて遭難したイギリスの探検隊の漂流記。
隊長のアーネスト・シャクルトン自身による著書で、写真も多く掲載され、当時の様子をうかがい知ることができます。
南極へ向かう途中、氷中の虜となり、身動きがとれなくなったエンデュアランス号。
当初は船中での生活が可能でしたが、やがて氷圧に耐え切れなくなったエンデュアランス号は破砕され、隊員たちは、氷上でのテント生活という過酷な状況に追いやられてしまいます。
不安的な浮氷上での生活からの脱出を試みて、探検隊一行はエレファント島に上陸。果たして隊員たちの運命はー。
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経験したことのない難事において、探検隊は進むか、とどまるか、何度もギリギリの選択を迫られます。
誰も絶対の自信など持てない中、決断をしなければならない状況。
決して自慢げに語られることがないものの、極限の状況を切り抜けることができたのは、隊長シャクルトンの卓越したリーダーシップによるところが大きかったはずです。
仲間の命まで背負うプレッシャーの中での決断はどれほど大きかったことか。
その運命の結末がどうなるか、ぜひ確かめてみてください。
③大西洋漂流76日間【苛酷な洋上でのサバイバル】
1982年、大西洋上で嵐に見舞われた小型ヨット。そこからスティーブン・キャラハンの苛酷な洋上サバイバルが始まったー。
たった一人、76日間も洋上を彷徨い、奇跡の生還を果たした男の極限の手記。
途中、救命イカダが何度も損傷し、その度に限られた材料と工夫で応急処置し、望みをつないでいきます。
食料調達にも、気の遠くなるような忍耐と工夫が必要ですが、本書で何度も何度も出てくる魚がシイラとモンガラ。救命イカダに常に付きまとってくる存在で、こんな変わった習性があるとは知りませんでした。
これらの魚は、著者にとって貴重な食料(主食?)となっていき、ロープにかけて干物を作ることも。
あと、印象に残ったのが、鉛筆三本を使って六分儀を作り、緯度の測定を試みるところ。
これを使うことで、自分のおおよその現在位置を掴もうとしたのです。
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漂流中、サメの出現など、数多くの苦難に見舞われながらも生還を果たした著者は、エピローグで以下のように述べています。
今回の遭難によって、私は敗北感と、たえまない恐怖というものを味わった。だが、危機にただ圧倒されるのではなく、そこからなにかを学びとっていくという姿勢を身につけた。
まさに、私たちも身につけたい姿勢といえるのではないでしょうか。
④漂流【江戸時代の実話をもとにした珠玉の名作】
実話をもとにした、吉村昭による小説。
江戸時代(1785年)、土佐出身の主人公・長平が嵐で遭難し、仲間たちと伊豆諸島の鳥島に漂着。13年にも及ぶ無人島生活を丹念に描き、ついに故郷に戻るまでを描く巨編です。
長平たちは、島に生息するアホウドリを捕らえて、その肉を主食とし、卵の殻を利用して雨水を溜めるなど、生きるために懸命の努力をします。
特に印象的なのは、アホウドリが渡り鳥であることに気付き、今のうちに保存食を作っておく必要があると判断するシーン。
その他、穀物を喰いつくさず、種として撒くために残せばよかったと悔いる場面、貯水池を作る場面なども印象的です。
さらに、島からの脱出を図るために、まず船の模型を作ってテストをする場面など、自分たちにできる最善を尽くす姿勢に感銘を受けます。
長平たちは島を脱出する際に、後に漂着する者のために、道具類や記録などを整えて残します。素晴らしい思いやりであり、公共心と言えるのではないでしょうか。
なお、数十年後の1841年には、ジョン万次郎らもこの鳥島に漂着していたそうです。(約5ヶ月でアメリカ捕鯨船に救助)
もしかしたら、ジョン万次郎らも、長平たちが生活した名残を目にしていたのかもしれません。
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その後も同島に漂着する者が何人もいて、江戸時代(もちろんそれ以前もでしょうが)は何と海難が多かったのかと驚かされます。中には、絶海の孤島での暮らしに絶望し、自ら命を絶つ者もいました。
そんな状況でも希望捨てず、リーダーとして島の生活を安定させ、ついには故郷への帰還を果たした長平。
あまり知られていない人物ではありますが、苛酷な運命に挫けることなく、懸命に生きたその姿から多くを学べるはずです。
⑤大空のサムライ【絶体絶命の死地を何度も超えた撃墜王】
日本で最も有名といってもよい、旧日本海軍のエースパイロット・坂井三郎の自著。
単なる戦記物や武勇伝ではなく、戦いの苛酷さや非情さをも綴り、世界的なベストセラーにもなった名著です。
と言っても、決して堅苦しい内容ではありません。むしろ特筆すべきは、戦闘機乗りとしての痛快劇とも言えるエピソードを含んだ抜群の面白さ!
特に大東亜戦争の初戦では、連合軍を圧倒し、向かうところ敵なしの空の猛者ぶりを見せてくれます。
*なお、著者・坂井三郎は、映画化もされたベストセラー小説「永遠の0」にも、最高の技量をもった戦闘機パイロットとして登場します。
そんな中、日本軍にも著者にも一大転機になったのが、ガダルカナル島上空の戦い。
上空で敵の機銃を受け瀕死の重傷を負った著者は、何度も自爆を考えながらも、数時間におよぶ壮絶な単独飛行を経て、ラバウル基地に奇跡の生還を果たすのです。
後半のクライマックスは、戦争終盤における硫黄島での空戦。
著者は何と右目を失明した状態ながら、米軍戦闘機を撃墜する離れ業を見せるのですが、やがて敵戦闘機15機に囲まれる絶体絶命のピンチに!
ここで、操縦術(真っすぐ飛んでいると見せかけ、実は横スライドする飛行等)の限りを尽くし、敵の機銃を回避し続け、これも奇跡の生還を果たす物語が語られます。
なお、本書ではこの時、坂井機が一方的に逃げる様子が描かれていますが、実際には果敢に反撃してきた(そんなことあり得る?!)という米軍側の証言もあります。
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戦闘では火の出るような戦意を燃やす一方、同僚の死には慟哭し、傷ついた敵には同情を寄せるなど、筆者の人間味も本書の魅力の一つ。
ちなみに、著者はその撃墜数(64機)よりも、
- 列機を失ったことがない
- 飛行機を自分の操縦で壊したことがない
という2つを誇りにしていたそうです。
戦後、筆者は己の能力を最大限活かして生きることを信条とし、他に人も同様にすることをすすめています。
戦闘機乗りとして、何度も死線をくぐり抜けてきた筆者の言葉が重く響きます。
⑥零戦撃墜王【終戦まで8年間戦い抜いた伝説のトップエース】
撃墜機数202機を誇る、伝説のエースパイロット岩本徹三が書き遺した戦記。
もともと公表に備えてノートに下書きとして残されていたものらしく、表現や描写は抑え気味なものの、十分な迫力をもった戦記として読みごたえがあります。
何より感嘆すべきは、日中戦争での初出撃から大東亜戦争の終結まで、第一線で戦い抜き、そして生き残ったこと。
戦争終盤、何もかも劣勢な状況で、圧倒的な物量を誇る米軍を撃退し続けるその闘志!
有名な戦闘にも数多く参加し、最前線の戦闘機パイロットから見た名場面が多数描かれます。
真珠湾攻撃の際、最新鋭空母・瑞鶴の直掩機として警戒に当たり、戦闘こそ行われなかったものの、緊迫した空気が伝わってきます。
前半のハイライトは、史上初の空母対空母の戦いとして名高い、珊瑚海海戦。
その戦いに瑞鶴の直掩の戦闘機パイロットとして、空母に襲い掛かる米攻撃機を相手に、獅子奮迅の戦いをする様子も描かれます。
敵味方入り乱れ、何機撃墜したのかさえ分からなくなる激戦の中、米軍の空襲を必死に逃れようと、スコールに逃げ込む瑞鶴を追って着艦を試みるシーンなど、手に汗握る戦闘が描かれます。
その後、ラバウル基地で20~30機の零戦を率いて、来襲する米軍機(何倍も多い機数!)を毎回痛撃するシーンは圧巻。
個人的に好きなのは、夜間一方的に艦砲射撃を仕掛けてくる駆逐艦四隻に対し、たった一機で出撃するシーン。
果敢に銃撃を加え続け、うち三隻に小・中火災を発生させて撃退するという、驚異の活躍をみせてくれます。
終戦間近の坊ノ岬沖では、戦艦大和を撃沈したと直後と思われる米軍機を発見し、「大和の敵討ち!」とばかりに敵機を撃墜するのも忘れられない名シーンです。
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同じエースパイロットながら、先に紹介した坂井三郎とはまた違った価値観や経歴をもった岩本徹三。
(ちなみに、二人とも海軍航空隊所属ですが、直接の面識はなかったようです)
岩本徹三は終戦後の1955年、回想録のノートを残し、38歳の若さで病死してしまいます。
戦後は不遇の時を過ごしたとも言われていますが、大戦時に燃やし続けた彼の闘魂は、回想録の出版とともに世に知られることになったのでした。
まとめ【よりよい生き方のためにおすすめの本】
人はいつか迎える死を自覚することで、逆説的に生きることの尊さを知り、よりよい生き方について考えを深めることができるのだと思います。
今回紹介した作品は、全て死を強烈に意識せざるを得ない環境に置かれた人物を描いたもの。
そうした苛酷な環境下で、困難に負けずに立ち向かった人々に触れることで、自分自身のよりよい生き方につながるはずです。
ぜひ今回紹介した中から、まずは1冊を選んで、あなたの人生の糧にしてください。
定年を迎え、リタイヤした後は自由な時間が大幅に増えるという人が多いでしょう。 定年後に再雇用や再就職で働き続ける場合も、今までよりも労働時間が短くなることが多いと思います。仕事も趣味も充実したワークライフバランスが実現できると理想です[…]